国会議事堂中央ホール 幅5m×高2.5m
   

ステンドグラス史研究家 田辺千代

2018年7月11日(水)

日本のステンドグラス史研究家 田辺千代 [たなべちよ]

経歴

1942 福島県に生まれる
1969 横浜銀行協会入社
1981 ファイザー製薬横浜支店入社
1986 日本海事新聞横浜支局入社 ”ぽぷり欄”の連載を始める。
    在職中からステンドグラス史の調査を始める
1992 横浜学公開講座「横浜とステンドグラス」執筆
1995 横浜学セミナー「ヨコハマ名物シウマイ物語」
   株式会社崎陽軒代表取締役社長野並直文氏と対談
2001 横浜最古のステンドグラスを発見し、神奈川新聞に採り上げられる
2001 神奈川新聞地域総合面にステンドグラス史研究家として紹介される。
2002 日本海事新聞横浜支局を定年で退社

西洋家具職人(専門は椅子、芝家具で有名な東京芝区田村町で修行)の父三浦信好、母タヱ子の長女として、1942年3月、母方の実家福島県で生まれる。
長女だったこともあり、父から大切に育てられる。上野の博物館、神田の古書店、演芸場、植木市、陶器市、小さい頃から父に連れられ歩いた。あとのごちそうが目的で文句も言わず従っていた。
横浜銀行協会、ファイザー製薬横浜支店を経て日本海事新聞横浜支局に定年まで勤務。在勤中の1987~1992まで、神奈川新聞”ぽぷり欄”のレポーター。
ステンドグラスに興味を持ったのは、この時取材で疑問を持ったのがキッカケで調べ始める。
現在、山深く川の流れる傍らの小さな屋根を持った家に夫とふたり暮らし。

好きなこと 読書、登山、絵を見ること描くこと
嫌いなこと 確かめないで流されるままになること
特技  少しのお酒と音楽があれば、どんな国のどんな場所でも踊り出せること。
琴(山田流)

主な研究成果

2004 宮越邸 小川三知作品発見
2016 鹿児島山形屋の小川三知作品復刻

主な執筆記事(ステンドグラス関連)

2003 小田原史談 「旧小田原駅舎のステンドグラスについて「
2004 郷土神奈川第42号 「日本のステンドグラス史 神奈川のステンドグラス」
2006 「日本のステンドグラス その歴史と魅力」(伝統技法研究会編)
2008 「日本のステンドグラス 小川三知の世界」(文:田辺千代、写真:増田章久 白揚社刊)
2010 「日本のステンドグラス 宇野澤辰雄の世界」(文:田辺千代、写真:増田章久 白揚社刊)
2013 「日本のステンドグラス 明治・大正・昭和の名品」(文:田辺千代、写真:増田章久 白揚社刊)
2016 大塚薬報・6月号

主な講演会

2011 下館・時の会 第8回波山の夕べ「小川三知と板谷波山 ステインドグラスと陶芸・二人の作品と交流」
2015 名古屋市文化のみち二葉館 記念講演「日本のステンドグラス」
2016 日本郵船歴史博物館 「重要文化財指定記念 まるごと氷川丸展」基調講演 「一等特別室のステンドグラス-戦前の貨客船-」
2017 日本ガラス工芸学会 「日本のステンドグラスのパイオニア宇野澤辰雄・小川三知 生誕150年記念
   -宇野澤辰雄と小川三知のステンドグラス技法の秘密について」

主なメディア出演・取材協力

2008 テレビ東京「美の壷 ~ステンドグラス」 出演
2008 NHK「新日曜美術館 ~小川三知」 出演
2017 「日経プラス1 何でもランキング」

日本のステンドグラスについて

ステンドグラス史の研究をしていますと言うと、おおかたの人が、「教会に入っている色の着いたガラスのことですか」と聞き返します。中には、日本語発音で「ステンドガラスのことですか」とも言います。
ガラスには違いないのですが、ただのガラスではありません。似て非なるもの、それがStainedglassです。色硝子を鉛線で繋ぎ、ひとつの美的世界を表したもののことです。具象・抽象・作家や職人が心を込めて造り出した作品に光線が入り、空気中の目には見えない震動が伝わると、何ともいわれぬ風景が生まれでるのです。

ステンドグラスは、建物の部分に入れられるものですから、建築物はとても大切な位置を占めます。ゴシック建築の壮大な寺院に入れられたステンドグラスは、世界中の人々に認識され、”バラ窓”と言うだけで、フランスのシャルトル大聖堂の名を挙げます。高くどっしりした石造りの中のステンドグラスは、暗い堂内に外からの陽光を通過させて輝き、人びとの心をとらえ、精神の高みへ導くのです。

日本のステンドグラスは、西洋の何千年のものとは違うもので、古いものでも、百数十年の歴史しか持っていません。しかしながら、残された作品の中には世界に比較しても遜色のない美しいものがあります。硝子の色も四季豊かな日本列島の色です。水分を含んだ淡あわしい色、繊細でありながら力強い瑞穂の国の色です。

学校、図書館、公会堂、銀行、デパート、病院、駅舎、温泉施設、旅館、教会、寺院、納骨堂、商店、喫茶店、個人邸など、実にさまざまな所に嵌入されています。純然たる日本家屋(書院造り)に素晴らしい作品が残されている例もあります。個人邸で興味深いことは、褻(け)や晴れの為の玄関や応接間、座敷のほかに厠、風呂場にかなり凝ったステンドグラスが使われていることです。このことは、羽織裏、着物のふきや裾回しにはっとするような美しい色を使って楽しむ、粋(いき)の文化と重なってみえます。また、富士山、白砂青松、家紋、国旗等に見られる象徴を大切にする日本人の意識を念頭において作品を見ると、日本独自の息づかいを感じ取ることができます。

旅に出る時は名所旧跡だけでなく、古い建物、そこに使われている壁紙、家具調度、意匠、そしてひっそりと静まりながら光を放っているステンドグラスの存在に気付いて下さい。ステンドグラスは一に自然光、二に外気とよばれる風や雨、そして何よりも存在に気付いた人が目を向けることで一層の輝きを増していくのです。

ステンドグラス史研究家  田辺千代